【小川洋子】 猫を抱いて象と泳ぐ
主人公の少年と「ブリキの太鼓※」のオスカルとを
ちょこっと重ねてしまったLocomoです。
こんにちは。
「慌てるな、坊や」
マスターの声は響きます。
唇を閉ざして生まれてきた少年。
インディラがエレベータに乗れなかった時の切なさ
マスターがクレーンに吊られた時の悲しみから
大きくなることに恐怖を持つ少年。
人形の中でチェスを指すリトル・アリョーヒンは、寡黙で、想像力豊かで
チェスの世界の静かな海を、果てしない海を、自由に漂います。
こういった本を読むと、将棋もチェスも麻雀もわからない自分が
とっても残念に思えます。
棋譜(きふ:互いの対局者が行っ た手を順番に記入した記録)が、バロック音楽や古代文字や
静かな湖や荒々しい波、そして、一人一人の人生・生き方を表現するなんて
なんて素敵なんでしょう。
基本的に涙腺が弱いワタクシですが
やはり、何度も何度も涙ぐみました。
初めて小川洋子さんの本を読みましたが
この世界、とっても気持ちがいいです。
ワタクシも、もしどこかで、
8×8のチェック模様を見かけることがあったら
その下に「猫を抱いた青年」を探すかもしれません。
写真はオランダ、アムステルダムの街中で。
雨のそぼ降る中、男性二人がチェスを指していました。
絵になります。
※「ブリキの太鼓」(1979年:ドイツ映画)
第1次大戦と2次大戦の間のダンツィヒの町を舞台に、3歳で大人になることを拒否し
自らの成長をとめた少年オスカルと、彼の目を通して見た大人の世界を描いた作品。
オスカルがブリキの太鼓を叩きながら奇声を上げると、ガラスが粉々に割れるという超能力と
オスカルの見た目と行動の奇妙さに、22歳のワタクシは、衝撃を受けた。
このビデオ(アノ当時はビデオだったの)を見た後は「ダカダカダカダカダ♪、キャ~」という
太鼓をたたく真似をしながら叫ぶというのが、
徹夜明けの残業で疲れ果てた、ナチュラルハイなワタクシの、一種のブームだった。
そう、そんなワタクシも奇妙だった。
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